作成日:2016/06/21
相続財産を寄附した場合の取扱い
故人の遺志を尊重して相続財産を寄附した場合に、気をつけたいポイントを教えてください。
夫が他界しました。私たち夫婦には子供がおりませんので、相続人は私と甥姪たち(夫の兄、姉の子)です。遺言書はありませんが、生前に自分が亡くなった際は、財産の一部を社会に役立つ団体等に寄附したいと申しておりました。
夫の財産を寄附したい場合には、手続きや税金などについてどのような取扱いになるのでしょうか?
奥様としては、ご主人の遺志を尊重したいということですね。相続時の寄附について、方法や税金の取扱いなど、気をつけたいポイントを以下にご紹介します。
- 遺言がない場合には相続人の意志に委ねられます。
自分が亡くなったら財産を寄附する、という場合には「どこ(誰)へ、何を(いくら)寄附する」という意思表示を、正式な遺言書という形で遺す必要があります。今回のご相談のケースでは、ご主人の遺言書はないとのことですから、ご主人の遺志で寄附することはできません。このような場合には、一度相続の手続きを行って相続した後、相続人から寄附をする、という手続きになります。例えご本人が生前に「寄附したい」と周囲の方に伝えていても、相続人にその意思がなければ寄附は実行されません。
- 相続税が非課税になる場合があります。
相続財産を寄附した場合には以下の要件を満たすと、寄附した財産について相続税が非課税となります。
- 寄附した財産が、相続や遺贈によって取得した財産(そのもの)であること(相続財産を換金した後の現金を寄附した場合などは、対象となりませんのでご注意ください。)
- 相続税の申告期限(相続日から10ヶ月後の応答日)までに、相続した財産を寄附すること
- 寄附先が、国、地方公共団体、その他教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる特定の公益法人であること
<非課税対象となる寄附先の例>- 日本赤十字社
- 財団法人日本ユニセフ協会
- 国境なき医師団
- 公益法人がん研究会
- 国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン
- 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン
その他、学校法人、諸団体等でも主務官庁より非課税対象法人の認定を受けており、非課税の対象となる団体もあります。寄附予定先へ事前にお問い合わせください。
- 所得税は寄附金控除や譲渡所得税に気をつけましょう。
今回のご相談で相続財産を寄附する場合には、相続人が相続した後に自分の財産を寄附することとなるため、寄附金控除を適用できるか検討しましょう。相続税の非課税の対象となる寄附先は、そのほとんどが所得税の寄附金控除の対象にも該当しますので、もし該当した場合には、相続人の所得税の確定申告の計算上、寄附金控除の対象に含めます。
<所得税の寄附金控除(所得控除)>
その年に支出した特定寄附金の額の合計額(*)−2,000円=寄附金控除額
(*)所得金額の40%が限度
なお、不動産や有価証券など、譲渡所得の基因となる財産を寄附する場合には、その寄附した財産について譲渡所得税が課税されます。(一定の要件を満たす場合には、期限内に手続きをすれば非課税となる特例があります。)
[まとめ]
- ご自身が亡くなった際に財産を寄附したい、という場合には必ず遺言書を作成しましょう。
- 寄附名目であれば、財産の種類や寄附先に関係なく相続税等が非課税となる訳ではありません。寄附をする場合には、相手方、財産の選定は慎重に行いましょう。